『花粉症』と言う概念は西洋医学ではわりと最近の近代になってから周知されるようになり治療法や薬の開発が進んでいますが東洋医学ではもっと昔の時代からその概念が存在し疾患として捉えられていました。
昔の東洋医学の古典書には花粉症と見られる記載があり花粉症を風邪(ふうじゃ)の一種と考え春先になると花粉症の症状が多くなることやその症状が一人一人違ったり体質によって異なったりすることが記載されています。
前回の投稿では花粉症を東洋医学的に解説し効果的な漢方薬を紹介しましたが今回の投稿では花粉症の東洋医学的養生法を紹介していきたいと思います。
症状が落ち着いている時でも習慣的に改善法を行うことで毎シーズン悩まされているあの症状から解放させてくれますので是非行ってみましょう!
●花粉症とは?
花粉症とはスギやヒノキなどの植物の花粉が原因となりくしゃみや鼻水と言ったアレルギー症状を引き起こす疾患です。
現代では日本の30%以上は花粉症と言われているほど花粉でアレルギー症状を引き起こす方が多いです。
特に食生活の欧米化などで若い世代に花粉症患者が増加していると言われています。
●花粉症は東洋医学では昔から治療されていた?
上記したように西洋医学では花粉症の概念はわりと最近になって確立され今でこそ罹患している方も多く薬や治療法も開発されてきています。
一方東洋医学ではもっと昔から花粉症の概念が存在し治療などが行われてきた歴史があります。
東風生於春。病在肝。
〜故春気者、病在頭。
〜故春善病鼽衂 (素問金匱真言論篇)
東風は春の季節によく診られ病変は肝に発生する。
春の気は肝に応じ、多くの病は頭にある。
春には善く鼽衂(鼻水や鼻血が良く出て鼻が詰まり通らなくなること)
を病むことが多い。
風客淫気、精乃亡、邪傷肝也。(素問生気通天論篇)
風邪が人体に侵入すると次第に熱へと変化し精血(せいけつ)
が損なわれる。これは邪気が肝臓を傷ったことが原因。
昔の古典書にはこのような記載があり当時から春先になると花粉症の症状が生じ悩まされていた方が多かったことが伺えます。
ですが現代のように花粉がアレルギー反応を引き起こしそれが原因となっていると言うより個人の免疫力や体質などにまずは原因がありそこに花粉が引き金となって発症すると言うように考えられていたようです。
このように東洋医学ではその人によって体質や抵抗力などは異なりその弱った部位をしっかりさせることで症状を緩和させていくような現代の医学とは少し違う角度から治療や診断を行います。
●東洋医学的花粉症のタイプ+効果的な養生法
◆タイプ1 肝気鬱滞(かんきうったい)
《目の痒みが酷かったり症状によってイライラしやすい》
肝の主な働きの一つに疏泄機能と言うものがあり体の気や血、水などの巡りをスムーズに行わせる機能で感情をコントロールする機能も含まれており怒りっぽかったり精神的に鬱状態になったりしている場合には肝が病んでいると考えます。
肝気鬱滞とは疏泄機能が衰退し全身の巡りが悪くなりそれにより他の臓器も失調を起こし体の機能低下を生じるような状態です。
肝は目にも関与しているとされ目が痒くなりやすいことも多いです。
古典書には春は肝気が昂りやすく気の逆上が生じやすい時期で花粉症のような症状が春に生じやす原因の一つと言われています。
●効果的な改善法
◆酸味のある食べ物を摂取する
適度な酸味は肝の働きをサポートし溜まった気をスッと抜いてくれる作用があります。
肝気鬱滞では全身の巡りが悪くなり気も停滞しやすい状態ですので停滞した気を発散させてあげましょう。
◆入浴などでストレスを解消
ストレスを発散できずに溜め込み過ぎてしまっていると気の巡りも肝の機能も悪くなってししまいます。
入浴や軽い運動など簡単にできることでもストレスは発散できますので日常生活にプラスすると効果的です。
また自然の中で深呼吸をするだけでも気が整い効果的です。
◆タイプ2 脾胃湿熱(ひいしつねつ)
《とにかく鼻水が大量に出たり鼻詰まりが多い》
脾の東洋医学的な作用に運化作用(消化や吸収を行う)があり脾の作用で体の気や血、津液(血液以外の体の水分)を生み出したり代謝や循環が行われています。
普段から甘いものをたくさん食べていたり連日の暴飲暴食などで脾に負荷がかかると湿熱と言う邪が脾や胃に悪影響を与え運化作用が失調し脾や胃に熱が生じている状態です。
水湿(余分な水分など)が体内に停滞しそれが各臓器に悪影響を与え外邪(外からくる疾患の原因など)に侵食されやすくなります。
脾や胃に関係した食欲不振や下痢や腹痛、嘔吐、腹部膨満感、手足がだるいなどの症状が生じやすくなります。
花粉症の場合ではとにかく鼻水が出たり涙が出る、鼻詰まりなどが主に生じやすくなります。
●効果的な改善法
◆食生活を見直す
一度に食べる量が多かったり食べるのが早かったり油分が多い食生活をしていると脾にかなりの負担になってしまいます。
食事はとても大切なことですがこのような食生活をしていると脾が弱ってしまうので栄養バランスを考え暴飲暴食にならないよう気をつけましょう。
◆昼間に体を動かす
本来活動する時間である日中に体を動かすことでエネルギーの生産性が向上し脾の作用をしっかりさせてくれます。
激しい運動でなくて良いのでウォーキングや筋トレなど自分でできる範囲から取り入れてみましょう。
◆タイプ3 心腎不交(しんじんふこう)
《サラサラした鼻水が出たり腰や膝がダルくなる》
心とは心臓、腎とは腎臓のことを指し東洋医学では心と腎は互いに協調しており、お互いがお互いを支え合っています。
心腎不交とは精神的なストレスが過度になり心火が亢進したり肉体的疲労が溜まり腎の機能が弱まったりすることで心と腎の関係が崩れ体に悪影響を与えてしまう状態です。
腎は体内の水分代謝に関わっており腎の機能が衰退すると水分の代謝に問題が生じ水のようなサラサラした鼻水が大量に出たり腰や膝がダルくなる、心の機能も衰退し動悸や不眠などの症状が見られることもあります。
●改善法
◆しっかり質の良い睡眠を心がける
睡眠はストレス発散や各臓器を休めてくれる大切な行動です。
しっかり質の良い睡眠を6〜7時間ほど取れるように心がけましょう。
入浴をしたりアロマを焚くことでも入眠のサポートになりぐっすりと寝れるので効果的です。
◆労働環境を見直す
過度な肉体疲労を伴う仕事や精神的ストレスが高い場所で生活していると私生活をどれだけ改善しても原因が改善されないのでまたぶり返してしまいます。
自分自身に合っていない場合は無理に続けるのではなく他の選択肢を考えてみることも大切です。
●まとめ
今回は花粉症に対する改善法をいくつか紹介しました。
花粉症は現代の日本人では30%ほどが症状を持っているとされており特に若者を多い疾患です。
特に対策をしないでいると基本的に毎シーズン辛いアレルギー症状に悩まされてしまいます。
症状が出ていないシーズンでもこれらの改善法を習慣にして行うことで次のシーズンでは悩まされることも減ると思いますので是非行ってみましょう。